「また辞めてしまった…」を防ぐ。社員の定着率が低い会社に共通する採用前の3つの間違いと改善策 | サイカツ.R

「また辞めてしまった…」を防ぐ。社員の定着率が低い会社に共通する採用前の3つの間違いと改善策

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「また辞めてしまった…」を防ぐ。社員の定着率が低い会社に共通する採用前の3つの間違いと改善策

「せっかく採用した社員が、またすぐに辞めてしまった…」

中小企業の経営者であれば、一度はこのような悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか?

こんにちは。株式会社SELF ACHIEVE代表の新原秀崇です。14年間、神戸でWEBマーケティング会社を経営する中で、私自身も幾度となく採用の壁にぶつかってきました。

特に、従業員5人未満の企業では、大卒者の3年以内離職率が56.3%にも上るというデータもあり、これは決して他人事ではありません。

実は、社員の定着率が低い問題の根源は、入社後ではなく「採用前」の段階に潜んでいることがほとんどです。

本記事では、14年間の会社経営と顧客獲得のマーケティングノウハウを応用した視点から、多くの会社が見落としがちな「採用前の3つの間違い」と、明日から実践できる具体的な改善策を、同じ経営者としての目線で詳しく解説します。

【この記事の結論】社員の定着は「採用前」の3つの改善で決まる

「せっかく採用した社員がすぐ辞めてしまう」という悩みは、入社後ではなく採用前の3つの間違いを見直すことで解決できます。

  • 間違い① 求人票が「企業目線」
    →改善策:「自社ならではの価値(UVP)」を求職者目線で伝えましょう。「アットホーム」のような曖昧な言葉ではなく、具体的な成長事例や独自の文化を盛り込むことが重要です。
  • 間違い② 面接で「スキル」しか見ていない
    →改善策:スキル以上に「企業文化への適合性(カルチャーフィット)」を見極めましょう。過去の行動を深掘りする質問で、候補者の価値観が自社と合うかを確認します。
  • 間違い③ 会社の「良いこと」しか伝えない
    →改善策:仕事の厳しい面や課題も正直に伝える「現実的な仕事情報(RJP)」を意識しましょう。入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップを防ぎ、信頼関係を築きます。
目次

間違い1:会社の「本当の魅力」を伝えきれていない求人票

まず最初に見直すべきは、会社の「顔」とも言える求人票です。応募が集まらない、あるいは応募があっても自社に合わない方ばかり…という場合、求人票の伝え方に問題があるのかもしれません。

陥りがちな「企業目線」の求人票とは?

「創業◯年の安定企業」「アットホームな職場です」「あなたのやる気を応援します!」

このような言葉が並んだ求人票、見たことはありませんか?私自身も創業当初、テンプレートを参考にこのような求人票を作ってしまい、全く手応えがなかった苦い経験があります。

なぜ、これらの言葉は響かないのでしょうか?答えは単純で、求職者の視点が欠けているからです。どの会社にも当てはまるような言葉では、数ある求人情報の中に埋もれてしまい、「この会社で働きたい」という強い動機には繋がりません。

WEBマーケティング視点で考える「採用ターゲット」設定の重要性

顧客獲得のためのWEBマーケティングでは、まず「誰に商品を届けたいか」というターゲット(ペルソナ)を徹底的に考えます。これは採用も全く同じです。

「誰でもいいから来てほしい」というスタンスでは、本当に来てほしい人材には届きません。まずは、自社にマッチする理想の社員像を具体的に設定してみましょう。

【採用ペルソナ設定の具体例】

  • 年齢・経験: 20代後半、営業経験3年
  • 価値観: チームで協力して目標達成することに喜びを感じる
  • 性格: 新しいことに挑戦するのが好きで、自ら学ぶ意欲が高い
  • キャリアプラン: 将来的にはマネジメントにも挑戦したいと考えている
  • 情報収集: 転職サイトの他に、企業のSNSやブログもチェックする

このように具体的に人物像を描くことで、その人に響くメッセージは何か、どんな情報を提供すべきかが見えてきます。

関連記事: 欲しい人材だけを狙い撃ち!顧客獲得のプロが教える、採用におけるペルソナ設定の具体的な3ステップ

求職者の心に響く「自社ならではの価値(UVP)」の見つけ方と伝え方

ペルソナが決まったら、次はその人に向けた「自社ならではの価値」を言語化します。マーケティング用語でUVP(Unique Value Proposition)と言いますが、難しく考える必要はありません。「他社ではなく、うちの会社で働くことで得られる特別な価値は何か?」を考えることです。

給与や休日といった条件面で大手企業と勝負するのは、中小企業にとって簡単なことではありません。だからこそ、条件以外の魅力を伝えることが重要になります。

【UVPの見つけ方と伝え方のヒント】

  • 経営理念への共感: 経営者であるあなたの想いや、会社が目指すビジョンを具体的に語る。
  • 社員の成長事例: 「入社3年で未経験からプロジェクトリーダーになった先輩がいる」など、具体的なキャリアパスを示す。
  • 独自の社内文化: 「月1回の勉強会でスキルアップできる」「部署を超えたランチ会で交流が盛ん」など、会社の雰囲気が伝わる情報を発信する。
  • 顧客からの声: 「お客様からこんな感謝の言葉をいただいた」というエピソードは、仕事のやりがいを伝える強力なメッセージになります。

弊社のクライアントである神戸の製造業の会社様では、求人票に「ベテラン職人の技術を若手に継承するプロジェクト」の話を具体的に盛り込んだところ、「技術を学びたい」という意欲の高い若手からの応募が大幅に増えた事例があります。

間違い2:候補者の「スキル」ばかり見るスキル偏重の面接

書類選考を通過し、いよいよ面接へ。ここで多くの経営者が陥りがちなのが、「スキルや経歴」ばかりに注目してしまう間違いです。

なぜ「スキルが高い人材」が定着しないのか?

「即戦力が欲しい」という気持ちは、経営者として痛いほどよく分かります。しかし、スキルや経歴だけで採用を決めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

弊社の経験でも、過去に輝かしい経歴を持つ方を採用したものの、会社の価値観や仕事の進め方に馴染めず、数ヶ月で辞めてしまったことがありました。この失敗から学んだのは、スキル以上に「企業文化への適合性(カルチャーフィット)」が定着の鍵を握るということです。

ある調査でも、早期離職の主な原因はスキル不足よりも「人間関係」や「社風が合わない」といった価値観の不一致であることが示されています。

価値観のマッチ度を見抜く「カルチャーフィット質問」の実践例

では、面接で候補者の価値観や人柄をどう見抜けばよいのでしょうか?
弊社の経験では、過去の行動について深掘りする質問が非常に有効です。

【面接で使えるカルチャーフィット質問例】

質問例見極めたいポイント
「これまでの仕事で、最も困難だった状況と、それをどう乗り越えたか教えてください」ストレス耐性、問題解決能力、思考のプロセス
「チームで仕事をする上で、あなたが最も大切にしていることは何ですか?」協調性、コミュニケーションスタイル
「上司や同僚と意見が対立した経験はありますか?その時どう対応しましたか?」対人関係の構築力、柔軟性
「どのような職場環境で、ご自身の能力が最も発揮できると思いますか?」会社との相性、求める働き方

これらの質問に正解はありません。重要なのは、その回答から候補者の価値観が自社のものと近いかどうかを感じ取ることです。

関西企業の特性を活かした面接のポイント

特に、私たち関西の企業は、ビジネスライクな関係以上に、長期的な信頼関係や「人情」を大切にする文化が根付いていると感じます。

14年間、神戸で経営を続ける中で実感するのは、面接は「審査」の場であると同時に、「お互いを知る」ための対話の場であるということです。

ロジックだけでなく、経営者であるあなたの熱意や人柄を率直に伝えること。「この人と一緒に長く働きたい」と心から思えるかどうか。その感覚を大切にすることが、関西企業における採用成功の秘訣かもしれません。

間違い3:「良いこと」しか伝えない期待値コントロールの失敗

最後の間違いは、採用したいという気持ちが強すぎるあまり、会社の「良いこと」ばかりを伝えてしまうことです。

入社後の「こんなはずじゃなかった」が生まれる瞬間

「優秀な人材を逃したくない」その一心で、仕事の魅力や会社の良い面ばかりをアピールしてしまう。これは、結果的に最も避けたい「入社後のギャップ」を生み出す原因となります。

「聞いていた話と違う」「こんなに大変だとは思わなかった」

この「こんなはずじゃなかった」という感情は、エンゲージメントの低下を招き、早期離職の最大の引き金になります。結局、時間とコストをかけて採用した努力が、すべて水の泡となってしまいます。

信頼関係を築く「現実的な仕事情報(RJP)」の伝え方

そこで重要になるのが、RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)という考え方です。これは、仕事の良い面だけでなく、厳しい面や現在会社が抱えている課題も正直に伝えるアプローチです。

これは、弊社の顧客獲得支援における「期待値コントロール」のノウハウと全く同じです。最初に過度な期待をさせず、現実的なゴールとそこに至るまでの課題を共有することで、お客様との長期的な信頼関係が築けます。

採用においても、会社の課題を正直に伝えることは、決してマイナスにはなりません。むしろ、誠実な姿勢として候補者に伝わり、信頼関係の第一歩となります。

【課題を「成長機会」として伝えるトーク例】
「現在、弊社は新しい事業の立ち上げフェーズで、正直に言ってまだ仕組みが整っていない部分も多くあります。マニュアル通りに仕事をするというよりは、一緒に仕組みを作っていく大変さがあります。しかし、それはご自身のアイデアを形にできる大きなチャンスでもあると考えています。」

このように伝えることで、課題を乗り越える意欲のある人材や、変化を楽しめる人材からの応募が期待できます。

経営者として「覚悟」を共有することの価値

最後に、経営者であるあなた自身の言葉で、会社のビジョンだけでなく、現在地や直面している課題を率直に語ることが何よりも重要です。

私自身、面接の最終段階では必ず「今、会社はこういう課題に直面していて、それを乗り越えるためにあなたの力が必要だ」という話をします。これは、候補者に対する「覚悟」の共有です。

この覚悟を共有することで、候補者は単なる「従業員」ではなく、「共に未来を創る仲間」として入社してくれます。そして、その仲間意識こそが、入社後の困難を乗り越える原動力となり、結果的に高い定着率に繋がるのだと、14年間の経営経験から確信しています。

よくある質問(FAQ)

Q: 採用コストをかけられない中小企業は、まず何から始めるべきですか?

A: まずは本記事で解説した「求人票の見直し」から始めることをお勧めします。これはコストをかけずに実践できる最も効果的な改善策の一つです。弊社の経験上、WEBマーケティングの視点で求人票を書き換えるだけで、応募の質が大きく変わることがあります。

Q: 会社の知名度が低い場合、どうやって応募者を集めればいいですか?

A: 知名度で大手と勝負する必要はありません。SNSなどを活用し、経営者の想いや社員の働く姿を継続的に発信することが有効です。14年間のSNS集客の経験から言えるのは、共感を呼ぶ発信が、知名度を上回る応募動機になるということです。

Q: 結局のところ、給与や待遇が良くないと社員は定着しないのではないでしょうか?

A: 待遇はもちろん重要ですが、それだけが理由ではありません。特に中小企業では、経営者との距離の近さや、個人の成長機会、企業文化への共感が強い定着の要因になります。弊社のクライアントでも、待遇改善以上に企業理念の浸透で定着率が向上した事例があります。

Q: 「カルチャーフィット」を重視しすぎると、多様性が失われませんか?

A: 非常に重要なご指摘です。「カルチャーフィット」とは、同じ考えの人を集めることではありません。会社の「変えてはならない価値観」に共感できるかを基準とし、その上で多様なスキルや個性を持つ人材を受け入れることが理想です。

Q: 関西の求職者は、どのような点を重視する傾向がありますか?

A: 神戸を拠点とした14年間の経験から、関西の求職者は実用性やコストパフォーマンスに加え、長期的な信頼関係や「人情」を大切にする傾向があると感じます。面接ではロジックだけでなく、経営者の熱意や人柄を伝えることが特に重要です。

まとめ

社員の定着率という課題は、多くの経営者にとって頭の痛い問題です。

しかし、本記事でご紹介したように、その原因の多くは「採用前」の3つの間違いにあります。

  1. 会社の「本当の魅力」を伝えきれていない求人票
  2. 候補者の「スキル」ばかり見るスキル偏重の面接
  3. 「良いこと」しか伝えない期待値コントロールの失敗

14年間の経営経験から断言できるのは、採用とは「会社のファン」になってもらうマーケティング活動そのものだということです。

求人票で本当の魅力を伝え、面接で価値観を共有し、会社の現実を正直に話す。まずはこの3つのポイントを見直すことから始めてみてください。

同じ中小企業の経営者として、皆さまの会社が、長く一緒に成長できる大切な仲間と出会えることを心から願っています。


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弊社では、14年間のWEBマーケティングの知見を活かした、関西の中小企業様に特化した採用支援サービス「サイカツ.R」を提供しています。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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新原秀崇 監修者:新原秀崇

株式会社SELF ACHIEVE 代表取締役CEO。2011年の創業以来14年間、神戸を拠点にWEBマーケティング会社を経営。中小企業の顧客獲得支援で培ったSNS集客ノウハウを採用分野に応用し、関西企業の採用課題解決を専門とする。「採用の仕組み化」「採用の資産化」をコンセプトに、持続可能な採用戦略の構築を支援している。

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