14年のWEBマーケ会社経営者が断言。これからの採用活動は「マーケティング思考」がなければ絶対に成功しない理由

株式会社SELF ACHIEVE 代表取締役CEOの新原です。
「求人広告費をかけても、求める人材からの応募が全く来ない…」
「せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまう…」
神戸で会社を立ち上げて14年間、関西エリアの多くの中小企業経営者様から、このような採用に関する悲痛な叫びを伺ってきました。同じ経営者として、そのお気持ちは痛いほどよく分かります。

実は、その根本的な原因は、採用活動を「単なる募集業務」と捉えてしまっている点にあります。
私はWEBマーケティングの専門家として断言します。
これからの採用活動は「マーケティング思考」、つまり候補者を”未来のお客様”として捉え、自社の魅力を戦略的に伝えてファンになってもらう活動がなければ、絶対に成功しません。
本記事では、14年間の顧客獲得支援で培ったノウハウを基に、なぜ採用にマーケティング思考が不可欠なのか、そして明日から実践できる具体的なステップを、同じ経営者としての視点から徹底解説します。
【この記事の結論】採用マーケティング思考が必須な3つの理由
- 理由1:採用市場の変化
労働人口の減少により、求人を出して待つだけの「待ちの採用」では人が集まらない時代になりました。企業側から候補者にアプローチする必要があります。- 理由2:候補者の行動変化
候補者は応募前にSNSや口コミサイトで企業の「リアル」を徹底的に調べます。候補者を「未来のお客様」と捉え、自社の魅力を積極的に発信し、選ばれる努力が不可欠です。- 理由3:ミスマッチの防止
採用プロセスを「認知→興味→応募→選考」という「採用ファネル」で捉え、各段階で適切な情報を提供することで、企業文化への理解が深まり、入社後のミスマッチを防ぎます。
目次
なぜ、従来の「待ち」の採用活動では通用しなくなったのか?
「昔は求人を出せば、それなりに応募があったのに…」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか?その感覚は間違いではありません。
しかし、残念ながらその成功体験は、もはや通用しない時代になってしまいました。
14年間で見てきた採用市場の残酷な変化
私が会社を立ち上げた2011年頃と今とでは、採用市場は全くの別物です。経営者として肌で感じるのは、労働人口の減少による、熾烈な人材獲得競争です。
弊社のクライアントである阪神間の製造業の社長様は、こう嘆いていました。
「昔ながらのハローワークや求人サイトに掲載しても、応募は数えるほど。しかも、求める技術を持った人材はまず来ない。大手と同じ土俵では、給与や福利厚生で太刀打ちできない…」
これは、多くの中小企業が直面している現実ではないでしょうか。単に求人サイトに掲載するだけの「待ち」の姿勢では、情報の大海に埋もれ、候補者に自社の存在を見つけてすらもらえない。これが、この14年で最も残酷な変化だと感じています。
候補者の行動変化:情報は「探し」、そして「比較」する時代へ
WEBマーケティングの観点から見ると、候補者(求職者)の行動は、商品やサービスを探す顧客の行動と全く同じです。
少し前までは、求人サイトの情報が全てでした。しかし今はどうでしょうか?
候補者は応募前に、企業の公式サイトはもちろん、SNS、口コミサイト、社長のブログまで徹底的に調べ、その会社の「リアル」を探します。
「候補者は、応募前にあなたの会社のことを、あなたが思う以上に調べている」
この事実を、私たちは真摯に受け止めなければなりません。企業側から積極的に、そして正直に情報を発信していなければ、候補者は不安を感じ、比較検討の土俵にすら上がれないのです。
「とりあえず応募」の終焉とミスマッチの増大
売り手市場が続くいま、候補者はより慎重に、そして主体的に企業を選ぶようになりました。「とりあえず応募してみよう」という候補者は減り、「この会社で本当に自分の未来を託せるのか?」を真剣に見極めようとしています。
その結果、何が起こるか。
企業の本当の魅力や価値観が伝わっていなければ、そもそも応募に至りません。
仮に、給与などの条件面だけで応募があったとしても、企業文化や働き方への理解が浅いため、入社後に「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こりやすくなります。

実際に弊社のクライアントでも、採用コストをかけてやっと採用した若手が、数ヶ月で辞めてしまうという負のループに陥っていました。これは、採用活動の入り口で「マーケティング思考」が欠けていたことが大きな原因でした。
採用を成功に導く「マーケティング思考」の正体
では、採用を成功に導く「マーケティング思考」とは、一体何なのでしょうか?難しく考える必要はありません。これは、私たちが普段、お客様を獲得するために行っている活動そのものなのです。
候補者は「未来のお客様」。”口説く”対象と捉え直す
マーケティングの基本は「顧客理解」です。これを採用に置き換えてみましょう。
- 誰に(ターゲット): どんなお客様に来てほしいか?
- 何を(価値): お客様にどんな価値を提供できるか?
- どのように伝え(手法): どうすればお客様に知ってもらえるか?
- ファンになってもらうか: どうすればお客様に選ばれ、長く付き合ってもらえるか?
このフレームワークは、そのまま採用活動に応用できます。候補者を単なる「働き手」ではなく、自社の未来を共に創る「未来のお客様」と捉え直し、どうすれば自社を好きになってもらえるか、つまり”口説けるか”を考えること。これが採用マーケティングの第一歩です。
「給与や待遇」だけではない、自社の”本当の魅力”の見つけ方
「ウチみたいな中小企業に、そんな魅力なんて…」
14年間で、この言葉を何度聞いたか分かりません。しかし、断言します。魅力のない会社など、一社もありません。
大企業が「給与」や「ブランド力」で勝負するなら、中小企業は別の土俵で戦うべきです。その武器となるのが、独自の「価値提案(EVP:Employee Value Proposition)」です。
ぜひ、社員の皆さんと一緒に考えてみてください。
- 仕事のやりがい: どんなお客様に、どうやって喜んでもらっているか?
- 企業文化・風土: どんな雰囲気で、どんな仲間と働いているか?
- 成長の機会: どんなスキルが身につき、どう成長できるか?
- 経営者の想い: 社長はどんな未来を描き、何を大切にしているか?
これらは、給与や待遇と同じくらい、いえ、それ以上に候補者の心を動かす強力なメッセージになります。弊社の経験上、関西の中小企業様は、特にこの「想い」や「実直な姿勢」にこそ、磨けば光る魅力が眠っています。
採用ファネル:候補者が”ファン”になるまでの道のりを設計する
マーケティングでは、顧客が商品を知ってから購入に至るまでの心理的なプロセスを「ファネル(漏斗)」というモデルで考えます。これを採用に応用し、候補者が自社を認知してから入社を決意するまでの道のりを設計しましょう。
採用ファネル | 候補者の心理状態 | 企業がすべきこと(例) |
---|---|---|
認知 | 「こんな会社があるんだ」 | SNSでの情報発信、社員ブログ、メディア掲載 |
興味・関心 | 「面白そうな会社だな、もっと知りたい」 | 魅力的な採用サイト、社員インタビュー記事、説明会 |
応募 | 「ここで働いてみたい、話を聞きたい」 | 分かりやすい募集要項、簡単な応募フォーム |
選考 | 「この会社は自分に合っているか?」 | 丁寧な面接、迅速な連絡、現場社員との面談 |
内定・入社 | 「この会社に決めよう!」 | オファー面談、内定者フォロー、入社前イベント |
このように各段階で候補者の気持ちを想像し、適切なアプローチを設計することで、場当たり的ではない、戦略的な採用活動が可能になります。
【実践編】明日から始める!採用マーケティング5つのステップ
ここからは、14年間のWEBマーケティングの知見を基に、明日からでも始められる具体的な5つのステップをご紹介します。
ステップ1:求める人物像を解像度高く描く「採用ペルソナ設計」
「誰でもいいから来てほしい」。この考えが、採用失敗の最大の原因だと断言します。
まずは、「本当に来てほしいたった一人の人物像」を具体的に描くことから始めましょう。これを「採用ペルソナ」と呼びます。
【ペルソナ設計のポイント】
- スキル・経験: どんな技術や経験を持っているか?
- 価値観・性格: どんなことを大切にし、どんな性格か?(例:チームワークを重視する、新しい挑戦が好き)
- 働き方の嗜好: どんな働き方を望んでいるか?(例:裁量権を持って働きたい、地域に貢献したい)
- 情報収集の方法: 普段、どんなSNSやWebサイトを見ているか?
弊社で実際に使っているペルソナシートのテンプレートを参考に、ぜひチームで話し合いながら作成してみてください。ペルソナが明確になるだけで、この後の全てのステップの精度が劇的に向上します。
詳しくは「欲しい人材だけを狙い撃ち!顧客獲得のプロが教える、採用におけるペルソナ設定の具体的な3ステップ」の記事もご覧ください。
ステップ2:候補者の心を動かす「情報発信(コンテンツ作成)」
ペルソナが設計できたら、次はその人の心に響くメッセージ、つまり「コンテンツ」を作成して発信します。
【コンテンツの具体例】
- 社員インタビュー: 実際に働く社員の声ほどリアルなものはありません。仕事のやりがいや、入社した理由などを語ってもらいましょう。
- 「とある社員の一日」: 具体的な仕事の流れを見せることで、候補者は入社後の自分をイメージしやすくなります。
- 経営者のブログ・SNS: 経営者の言葉で、会社のビジョンや事業への想いを直接伝えることは、中小企業にとって最強の武器です。
- 失敗談や苦労話: 良いことばかりでなく、過去の失敗をどう乗り越えたかを語ることで、誠実さが伝わり、共感を呼びます。

14年のWEBマーケティングの経験から言えるのは、「作り込まれた綺麗な言葉より、多少不器用でも正直な言葉が人の心を動かす」ということです。
ステップ3:ペルソナと出会うための「情報発信チャネル選定」
素晴らしいコンテンツができても、ペルソナが見てくれなければ意味がありません。ステップ1で考えた「ペルソナが普段どこで情報を得ているか」に基づいて、最適な媒体(チャネル)を選びましょう。
- 若手エンジニア向けなら: 技術ブログ、GitHub、X(旧Twitter)
- デザイナー向けなら: Instagram、Behance、note
- 地域密着で探すなら: 地元の情報サイト、Facebookコミュニティ
また、求人サイトに掲載して待つだけでなく、企業側からアプローチする「攻め」の採用手法も中小企業にこそ有効です。
- ダイレクトリクルーティング: 転職サイトのデータベースから、会いたい人材に直接スカウトを送る手法。
- リファラル採用: 社員に友人や知人を紹介してもらう手法。エンゲージメントの高い人材が集まりやすいのが特徴です。
やみくもに広告を打つのではなく、ペルソナとの接点を狙い撃ちする戦略的な視点を持ちましょう。
ステップ4:応募から内定までを一気通貫で管理する「候補者体験の向上」
選考プロセスは、企業が候補者を「選ぶ」場であると同時に、候補者が企業を「評価する」場でもあります。応募から内定までの全てのコミュニケーションが「候補者体験(Candidate Experience)」です。
【候補者体験を向上させるチェックリスト】
- 応募後の連絡は、24時間以内に返せているか?
- 面接官は、候補者の話を真摯に聞き、魅力づけができているか?
- 選考結果の連絡は、約束した期日通りに行えているか?
- 不採用者に対しても、丁寧な対応ができているか?
私自身も経営者として、面接官のトレーニングや選考プロセスのスピード改善には力を入れてきました。一つひとつの丁寧な対応が、会社の評判を創り、未来の応募者へと繋がっていきます。
ステップ5:効果測定と改善「採用活動のPDCA」
採用マーケティングは「やりっぱなし」では絶対に成功しません。必ず効果を測定し、改善を繰り返す「PDCAサイクル」を回しましょう。
【見るべき重要指標(KPI)の例】
- 応募数: 各チャネルからどれくらいの応募があったか?
- 書類通過率・面接通過率: どの段階で離脱が多いか?
- 内定承諾率: 何人に内定を出し、何人が承諾してくれたか?
- 採用単価: 一人採用するのに、いくらコストがかかったか?
最初はExcelでの簡単な集計で構いません。データを基に「なぜこのチャネルからの応募は質が高いのか?」「なぜ面接の辞退が多いのか?」といった仮説を立て、次のアクションに繋げることが重要です。
関西の中小企業経営者が見落とす「採用マーケティング」の罠
14年間、特に関西の中小企業様を支援する中で、採用マーケティングに取り組む際に陥りがちな、特有の「罠」があることに気づきました。
罠1:「ウチには発信するような魅力がない」という思い込み
これは本当によく聞く言葉ですが、先ほども申し上げた通り、これは100%思い込みです。経営者の方が「当たり前」だと思っていることこそ、外部の人間から見れば、とてつもない魅力であることが多々あります。
【自社の魅力発見のための質問リスト】
- 創業から今まで、一番大変だったことは何ですか?それをどう乗り越えましたか?
- お客様から、どんな言葉をかけられた時に一番嬉しいですか?
- 社員のどんな行動を見た時に「ウチの社員はすごいな」と思いますか?
- 5年後、10年後、会社をどんな状態にしたいですか?
ぜひ、この質問に答えてみてください。そこにこそ、あなたの会社の「らしさ」であり、候補者の心を動かすストーリーの種が眠っています。
罠2:コスト意識が先行しすぎる「安かろう悪かろう」の罠
関西の経営者様は、堅実でコスト意識が高い方が多いと感じています。それは経営において非常に重要な資質です。しかし、採用において目先の費用だけで判断してしまうと、結果的に大きな損失を招くことがあります。
例えば、一番安い求人広告に掲載し続けても、求める人材からの応募がなければ、それは時間と費用をドブに捨てているのと同じです。
マーケティング思考に基づいた採用活動は、仕組みを作るまでに時間もコストもかかります。しかし、一度仕組みができてしまえば、長期的に見て安定して質の高い人材を獲得でき、結果的に採用コストの大幅な削減に繋がります。
実際に、弊社の支援先では、採用マーケティング導入後、1年で採用単価が半分以下になった事例もあります。
罠3:経営者が現場に丸投げしてしまう「他人事」の罠
「採用は人事担当の仕事だ」
もしこう考えているなら、今すぐその考えを改めてください。採用は経営そのものです。
特に、会社の規模が小さい中小企業においては、経営者の存在が会社の魅力そのものです。経営者自身が採用活動の先頭に立ち、自らの言葉で会社のビジョンや仕事への情熱を語ること以上に、候補者の心を動かすものはありません。
私自身も、最終面接には必ず同席し、候補者一人ひとりと真剣に向き合います。未来の会社を創る仲間集めを、他人に丸投げにはできない。その覚悟が、採用成功の最後の鍵を握っています。
よくある質問(FAQ)
Q: 採用マーケティングを始めるのに、専門的な知識やツールは必要ですか?
A: 14年の経験から言えるのは、まず必要なのは「思考の転換」です。候補者を”未来のお客様”と捉えること。ここから全てが始まります。高価なツールは後からついてきます。本記事で紹介した5つのステップを、まずはExcelや手書きで実践するだけでも大きな変化がありますよ。最初から完璧を目指さず、できることから始めるのが成功のコツです。
Q: WEBマーケティング会社を経営されていますが、SEOは採用にも効果がありますか?
A: 非常に効果的です。これは弊社の顧客獲得ノウハウの根幹でもあります。例えば、候補者が検索しそうなキーワード(例:「神戸市 WEBデザイナー 未経験」「大阪 製造業 やりがい」)を意識して、求人情報や社員インタビューのブログ記事を作成することで、広告費をかけずに意欲の高い候補者を集めることが可能です。
Q: すぐに結果が出ない、と聞きますが、どれくらいの期間を見ればよいですか?
A: 正直にお答えすると、一朝一夕にはいきません。これは採用の「仕組み」を作る活動だからです。弊社の経験では、3ヶ月〜半年ほど継続することで応募の質が変わり始め、1年後には安定して人材を確保できる体制が整うケースが多いです。短期的な応募者数だけでなく、会社の未来を支える「採用力」という長期的な資産を築くという視点が重要になります。
Q: 関西の企業として、特に意識すべきことはありますか?
A: 関西、特に阪神間の企業様は、地域に根ざしたお客様との信頼関係や、実直なものづくりへの姿勢など、全国に誇れる独自の魅力をお持ちです。東京の流行を真似する必要はありません。その「らしさ」を自信を持って、誠実に発信することが、結果的に優秀で、長く働いてくれる人材との最高の出会いに繋がると、14年間この地で経営してきて確信しています。
まとめ
本記事では、14年間のWEBマーケティング会社経営の経験から、これからの採用活動に「マーケティング思考」がいかに不可欠であるかを解説しました。
従来の「待ち」の姿勢から脱却し、候補者を”未来のお客様”と捉え、自社の魅力を戦略的に伝え、ファンになってもらう。
この思考の転換こそが、熾烈な人材獲得競争を勝ち抜く唯一の道です。
ご紹介した5つのステップは、明日からでも始められることばかりです。まずは、「ウチの本当の魅力って何だろう?」と、社員の皆さんと話し合うことから始めてみてください。
採用は、未来の会社を創るための最も重要な投資です。この記事が、あなたの会社の未来を創る一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
採用の「仕組み化」でお悩みの関西の経営者様へ。
14年間のWEBマーケティングノウハウを採用に応用した弊社の採用支援サービス「サイカツ.R」が、貴社の採用活動を根本から変革します。まずは無料の採用力診断から、お気軽にご相談ください。

株式会社SELF ACHIEVE 代表取締役CEO。2011年の創業以来14年間、神戸を拠点にWEBマーケティング会社を経営。中小企業の顧客獲得支援で培ったSNS集客ノウハウを採用分野に応用し、関西企業の採用課題解決を専門とする。「採用の仕組み化」「採用の資産化」をコンセプトに、持続可能な採用戦略の構築を支援している。