リスティング広告運用
神戸でWEBマーケティング会社を経営して14年、多くの中小企業の社長様から「リスティング広告を始めたが、成果が出ない」というご相談をいただきます。
その原因の多くは、広告運用の根幹である「キーワード選定」にあります。広告費を無駄にせず、本当に届けたいお客様にアプローチするためには、勘に頼らない戦略的なキーワード選定が不可欠です。
この記事では、リスティング広告の基本的な考え方から、私たちプロが実践している失敗しないための具体的な手順、そして限られた予算で成果を最大化するための応用戦略まで、経営者・ご担当者の皆様が明日から実践できるノウハウを実直に、誠実に解説します。
【この記事の結論】失敗しないキーワード選定 5つの鉄則
| 項目 | 結論・ポイント |
|---|---|
| ① 準備(最重要) | いきなりツールを使わず、まずは「誰に・何を」届けるか(ペルソナ)を明確にする。 |
| ② 選定のコツ | 「軸キーワード」に地域やニーズを掛け合わせ、具体的で成約率が高いロングテールキーワードを狙う。 |
| ③ マッチタイプ | 無駄な配信を防ぐため、最初は「フレーズ一致」または「完全一致」から始めて範囲を絞る。 |
| ④ 無駄の削減 | 「無料」「求人」など、ターゲット外の検索語句は必ず「除外キーワード」に設定する。 |
| ⑤ 優先順位 | まずは成約に近い「顕在層」や、競合対策となる「指名キーワード」から出稿する。 |
目次
なぜキーワード選定がリスティング広告の成果を左右するのか?
まず初めに、なぜキーワード選定がこれほどまでに重要なのか、その理由からご説明します。この基本を理解することが、効果的な広告運用の第一歩となります。
キーワード選定は「誰に広告を見せるか」を決める最重要工程
リスティング広告は、ユーザーが検索エンジンで入力する「検索語句(検索クエリ)」に連動して表示される広告です。つまり、私たちが設定する「キーワード」は、「このような検索をした人に見てもらいたい」という意思表示に他なりません。
このキーワード選定を間違えてしまうと、自社の商品やサービスに全く関心のないユーザーに広告が表示されてしまいます。結果として、無駄なクリックが増え、広告費だけが消費されていくという事態に陥ります。
例えば、神戸で高級注文住宅を販売している工務店様が「家」というキーワードだけを設定した場合、賃貸物件を探している学生や、家の修理方法を調べている人にも広告が表示されてしまいます。これでは、クリックされても成約には繋がらず、広告費だけが消費されていく、という事です。
適切なキーワードを選定することは、広告を「届けるべき人に、届ける」ための、最も重要な工程なのです。
広告の品質(クオリティスコア)にも直結する
キーワード選定は、広告の「品質」を測る指標である「品質スコア」にも大きな影響を与えます。品質スコアとは、Googleなどの広告媒体が、広告の品質を1から10の10段階で評価する指標です。
このスコアは、主に以下の3つの要素で構成されています。
- 推定クリック率: あなたの広告が表示された際に、クリックされる可能性がどのくらいかを示す予測値です。
- 広告の関連性: あなたの広告文が、設定したキーワードの意図とどれだけ一致しているかを示します。
- ランディングページの利便性: 広告をクリックした先のページが、ユーザーにとってどれだけ有益で使いやすいかを示します。
キーワードと広告文、そしてリンク先のWebページの内容が密接に関連しているほど、品質スコアは高くなります。そして、品質スコアが高い広告は、より低いクリック単価で、より上位に表示されやすくなるのです。
適切なキーワード選定は、広告の表示機会を増やすだけでなく、結果的に広告費の削減にも繋がる、非常に重要な要素と言えるでしょう。
関連: 【品質スコア改善】リスティング広告で成果を出す5つの実践テクニック
【5ステップで解説】失敗しないキーワード選定の基本的な手順
では、具体的にどのようにキーワードを選定すれば良いのでしょうか。ここでは、私たちが実践している基本的な5つのステップをご紹介します。この手順に沿って進めることで、誰でも戦略的なキーワード選定が可能です。
ステップ1:目的とターゲット(ペルソナ)を明確にする
まず最初に、広告を出稿する目的を明確にします。具体的に「何をしてもらいたいのか」を定義することから始めましょう。例えば、「資料請求」「問い合わせ」「商品購入」などが挙げられます。
次に、その行動を起こしてほしいのは「どのような人物か」、つまりターゲットとなる顧客の具体的な人物像(ペルソナ)を定めます。年齢、性別、役職、抱えている悩みなどを具体的にイメージすることで、後のキーワード選定の精度が格段に上がります。
「誰に、何をしてもらいたいのか」を最初に決めることが、全ての土台となることを強調します。
ステップ2:軸となるキーワードを洗い出す
次に、自社の商品やサービスを表現する基本的な単語、いわゆる「軸キーワード」をリストアップします。これは、自社のビジネスを一言で表すような、中心的なキーワードです。
例えば、私たちのようなWEBマーケティング会社であれば「WEB制作」「SEO対策」「リスティング広告」などが軸キーワードになります。まずは思いつく限り、これらのキーワードを洗い出してみましょう。お客様がどのような言葉で自社のサービスを探すかを想像することが大切です。
ステップ3:掛け合わせキーワードで具体化する
軸キーワードだけでは、検索の意図が広すぎてしまいます。そこで、軸キーワードに、顧客のニーズや属性を表す「サブキーワード」を掛け合わせることで、より検索意図を具体化します。
例えば、「WEB制作」という軸キーワードに対して、「神戸」「中小企業」「料金」といったサブキーワードを掛け合わせることで、「WEB制作 神戸 中小企業」や「WEB制作 料金」といった、より具体的なキーワードが生まれます。
このように複数の単語を組み合わせたキーワードは「ロングテールキーワード」と呼ばれ、検索ボリュームは少ないものの、成約に繋がりやすい傾向があります。
ステップ4:ツールを使ってキーワードを拡張・精査する
洗い出したキーワードが、実際にどのくらい検索されているのか、また広告出稿の際の単価はどのくらいかを知るために、ツールを活用します。代表的なツールが、Googleが無料で提供している「Googleキーワードプランナー」です。
このツールを使えば、キーワードの月間検索ボリュームや、関連するキーワードの候補を見つけることができます。
ただし、ツールが示す数値はあくまで参考値です。最も重要なのは、ステップ1で設定した自社の顧客像と照らし合わせ、本当にそのキーワードで検索するユーザーがお客様になり得るのかを判断することです。
ステップ5:キーワードをグルーピングする
最後に、選定したキーワードを、検索意図やテーマごとにグループ分けします。例えば、「WEB制作 料金」「WEB制作 見積もり」といった費用に関するキーワードと、「WEB制作 神戸」「WEB制作 大阪」といった地域に関するキーワードは、同じグループにまとめるべきではありません。
検索意図が異なるキーワードを同じグループで管理してしまうと、ユーザーの求める情報とズレた広告文が表示されてしまい、クリック率の低下を招きます。キーワードを適切にグルーピングすることで、ユーザーの検索意図に寄り添った広告文を作成でき、後の効果測定も効率的に行えるようになります。
【経営者必見】広告費を無駄にしないための3つの重要ポイント
キーワード選定の手順と合わせて、広告費を無駄にしないために、経営者の皆様にぜひ押さえていただきたい3つの重要ポイントを解説します。
ポイント1:「マッチタイプ」を理解し、表示範囲をコントロールする
リスティング広告には「マッチタイプ」という設定があり、キーワードに対してどの程度一致する検索語句まで広告を表示させるかをコントロールできます。主なマッチタイプは以下の3種類です。
マッチタイプの種類
- 部分一致: 設定したキーワードの関連語句にも幅広く表示される。意図しない表示も増えやすいが、新たなキーワードの発見に繋がることもある。
- フレーズ一致: 設定したキーワードと同じ語順の語句が含まれる場合に表示される。部分一致と完全一致の中間的な設定。
- 完全一致: 設定したキーワードと完全に同じか、酷似した語句にのみ表示される。最も確実性が高いが、表示機会は少なくなる。
Googleは近年、機械学習の観点から「部分一致」を推奨していますが、予算が限られる中小企業の場合、意図しない表示が増え、広告費が無駄になるリスクもあります。そのため、広告運用に慣れるまでは、表示範囲をある程度絞ることができる「フレーズ一致」や「完全一致」から始めることを、私は推奨しています。
ポイント2:「除外キーワード」設定で、不要なクリックを防ぐ
広告を表示させたくない検索語句をあらかじめ設定する「除外キーワード」は、不要なクリックを防ぎ、費用対効果を高めるために極めて重要です。例えば、法人向けのサービスを提供している場合、「無料」「中古」「個人」「求人」といったキーワードで検索するユーザーはターゲット外である可能性が高いです。
これらの語句を除外キーワードとして設定しておくことで、無関係なクリックを未然に防ぐことができます。広告配信を開始した後も、実際に広告が表示された「検索語句レポート」を定期的に確認し、成果に繋がらない語句を継続的に除外していく作業が、広告費の無駄をなくす上で不可欠です。
ポイント3:指名キーワード(自社名・サービス名)は必ず押さえる
「指名キーワード」とは、自社の会社名やサービス名、ブランド名など、固有名詞での検索を指します。自然検索で上位表示されるからといって、指名キーワードでの広告出稿は不要だと考える方もいらっしゃいますが、それは大きな機会損失に繋がる可能性があります。
なぜなら、競合他社があなたの会社名をキーワードとして広告を出稿し、検索結果の一番上に表示させて、顧客を奪い取ろうとする可能性があるからです。指名キーワードで広告を出稿しておくことは、競合への顧客流出を防ぐための防衛策として非常に重要です。
また、指名キーワードはクリック単価が安く、費用対効果も高い傾向にあるため、必ず押さえておくべきキーワードだと断言します。
【応用編】中小企業が成果を最大化するためのキーワード戦略
基本的な設定に加えて、さらに成果を最大化するための中小企業ならではの応用戦略をご紹介します。
BtoBビジネスにおけるキーワード選定の考え方
BtoB(法人向け)ビジネスとBtoC(個人向け)ビジネスでは、顧客の検索行動が大きく異なります。BtoBでは、検索ボリュームは少なくても、検索者の役職や、抱えている具体的な課題を反映したキーワードが非常に重要になります。
例えば、単に「会計ソフト」と検索するユーザーよりも、「製造業 業務効率化 会計ソフト」や「人事評価制度 導入 クラウド」といった具体的なキーワードで検索するユーザーの方が、成約に繋がる可能性は格段に高いでしょう。
私がこれまで支援してきた経験上、BtoBでは、検索数の多さに惑わされず、顧客の課題に深く寄り添ったキーワードを見つけ出すことが成功の鍵となります。
顧客の検討段階に合わせたキーワード設計
顧客が商品やサービスを認知し、購入に至るまでの検討段階は、大きく「潜在層」「準顕在層」「顕在層」の3つに分けられます。広告の成果を最大化するためには、この段階を意識したキーワード設計が有効です。
- 顕在層: ニーズが明確で、比較検討段階にある層。「〇〇 料金」「〇〇 比較」などで検索。
- 準顕在層: 課題は認識しているが、解決策を探している層。「〇〇 方法」「〇〇 やり方」などで検索。
- 潜在層: まだ課題に気づいていない層。
まずは、最も成約に近い「顕在層」向けのキーワードから出稿を開始し、確実な成果を狙います。そして、予算や運用状況に応じて、徐々に「準顕在層」へとターゲットを広げていく戦略が、中小企業の皆様にはおすすめです。
インハウス化を見据えたキーワード運用の視点
最後に、経営者の皆様にお伝えしたいのが、「インハウス化」、つまり広告運用をいずれは自社で行うことを見据える、という視点です。広告代理店に任せきりにするのではなく、どのような考えでキーワードが選定され、どのように運用が改善されていくのか、そのプロセスを自社にノウハウとして蓄積していくことが、長期的な会社の資産となります。
どのようなキーワードで成果が出ているのか、どのような広告文がクリックされているのか。それらのデータは、マーケティング活動全体の羅針盤となり得ます。丸投げにせず、自社のビジネスのことは自社が一番よく分かっているという視点で、代理店と伴走しながらノウハウを蓄積していく姿勢が、最終的にビジネスを成長させると、私は信じています。
よくある質問(FAQ)
ここで、お客様からよくいただく質問とその回答をまとめました。
Q: リスティング広告のキーワード数は、何個くらいが目安ですか?
A: 一概に「何個が正解」というものはありません。重要なのは数よりも質です。まずは成約の可能性が高いと仮説を立てた10〜20個程度のキーワードから始め、配信結果を見ながら改善していくのが中小企業の皆様にはおすすめです。多すぎると管理が煩雑になり、予算も分散してしまいます。
Q: 検索ボリュームが少ないキーワードは、設定しても意味がないのでしょうか?
A: 決してそんなことはありません。特にBtoBビジネスやニッチな商材では、検索ボリュームが少なくても、検索意図が非常に明確で、成約率が高い「お宝キーワード」である可能性が高いです。 競合も少ないため、低いクリック単価で優良な顧客を獲得できるチャンスがあります。
Q: キーワード選定に便利なツールはありますか?
A: まずはGoogleが無料で提供している「Googleキーワードプランナー」を活用しましょう。 関連キーワードの候補やおおよその検索ボリューム、クリック単価の目安を調べることができます。他にも様々なツールがありますが、まずはこの基本ツールを使いこなすことが重要です。
Q: 一度設定したキーワードは、ずっとそのままで良いのでしょうか?
A: いいえ、キーワードは定期的な見直しが不可欠です。配信後に「検索語句レポート」を確認し、成果の出ていないキーワードを停止したり、逆に成果の良い検索語句を新たなキーワードとして追加したり、不要な語句を除外設定したりする改善作業が成果を大きく左右します。
Q: 代理店に運用を任せている場合、キーワード選定について何をチェックすれば良いですか?
A: どのような考えでキーワードが選定されているのか、その根拠を必ず確認しましょう。また、定期的に「検索語句レポート」を共有してもらい、実際にどのような検索で広告が表示されているかを把握することが重要です。丸投げにせず、自社のビジネスに合っているか、経営者・担当者様の視点で一緒に考える姿勢が大切です。
まとめ
失敗しないキーワード選定とは、単にツールを使いこなす技術ではありません。「自社のお客様は、どんな言葉で、何を求めているのか」を真摯に考え抜く、マーケティングの原点そのものです。今回ご紹介した基本的な手順と応用戦略は、皆様が広告費を無駄にせず、着実に成果へと繋げるための羅針盤となるはずです。
キーワード選定は一度で終わるものではなく、お客様と向き合いながら改善を続けるプロセスです。もし、自社だけでのキーワード選定や広告運用にお悩みの場合は、私たち専門家が伴走することも可能です。まずは無料相談から、お気軽にお声がけください。






