リスティング広告運用
神戸でWEBマーケティング会社を立ち上げて14年間、多くの中小企業の経営者様と共に、WEB集客の課題解決に取り組んでまいりました。その中でも特に不動産業界の皆様から、「リスティング広告を始めてみたものの、なかなか成果が出ない」「広告費ばかりがかさんでしまう」といった切実なお悩みを伺う機会が少なくありません。
不動産業界は、家を探している顕在的なニーズを持つユーザーに直接アプローチできるため、リスティング広告との相性が非常に良い業界です。 しかしその一方で、正しい知識と戦略がなければ、貴重な広告費を無駄にしてしまうリスクもはらんでいます。
そこで今回は、不動産業界のリスティング広告で確実に成果を出すための「運用ポイント」と、弊社が実際に支援してきた「成功事例」を、私の実務経験に基づいて徹底解説します。
【この記事の結論】不動産リスティング広告 成功の3つの鉄則
- 鉄則1:キーワードは「地域名 × 物件種別」で狙う
「神戸市中央区 賃貸マンション」のように、成約に近いユーザーをピンポイントで集客します。さらに「相場」「内覧予約」といった行動を示す語句を組み合わせるのが効果的です。- 鉄則2:無駄をなくす「除外キーワード設定」を徹底する
「とは」「DIY」「無料」「求人」など、問い合わせに繋がらないキーワードからのアクセスを遮断し、広告費の無駄遣いを防ぎます。この設定の有無で費用対効果は劇的に変わります。- 鉄則3:AI(P-MAX)と自社データを活用する
GoogleのAIが最適な顧客を探す「P-MAXキャンペーン」を積極的に活用します。また、Cookie規制に備え、問い合わせ履歴などの「自社データ」を蓄積・活用することが今後の成功の鍵です。
目次
なぜ今、不動産業界でリスティング広告が重要なのか?
7割が検索から始める時代、Web上の「一等地」を確保する
もはや言うまでもありませんが、現代の住まい探しはインターネット、特に検索エンジンから始まるのが当たり前になっています。実際に、賃貸物件を探した人の約6割が「物件検索のWebサイトを見る」ことから部屋探しを始めているというデータもあります。
参考: Webサイトでの賃貸物件探し、2019年から2倍に オンラインサービス利用経験は3割、リピート意向は高い
これはつまり、GoogleやYahoo!の検索結果でいかに自社の物件情報や会社名を露出できるかが、集客の成否を分けるということです。リスティング広告は、ユーザーが検索したその瞬間に、検索結果の最上部という、いわばWeb上の「一等地」に自社の広告を表示させることができる、極めて強力な手法なのです。
ポータルサイト依存からの脱却と、自社集客力の強化
多くの不動産会社様が、SUUMOやHOME’Sといった大手ポータルサイトからの集客に大きく依存しているのが現状ではないでしょうか。 確かにポータルサイトは絶大な集客力を持ちますが、一方で掲載費用は年々高騰しており、他社との価格競争も激化しています。
リスティング広告を活用し、自社サイトへ直接ユーザーを呼び込むことは、この「ポータルサイト依存」から脱却し、広告費を自社の資産(顧客リストやサイトの知名度)として蓄積していくための第一歩です。 長期的な視点で見れば、自社での集客力を強化することこそが、経営を安定させる上で最も重要な戦略だと、私は考えています。
不動産業界リスティング広告の費用対効果と予算の考え方
費用相場は月20〜50万円。ただし、重要なのは「CPA」という考え方
「リスティング広告を始めるには、いくらくらいの予算が必要ですか?」というご質問をよくいただきます。一概には言えませんが、多くの企業様が月額20万円〜50万円程度からスタートされるケースが多いです。
ただし、本当に重要なのは予算の総額ではありません。注目すべきは「CPA(Cost Per Acquisition)」、つまり「1件の問い合わせ(コンバージョン)を獲得するために、いくらの広告費がかかったか」という指標です。
例えば、広告費に50万円かけて10件の問い合わせがあればCPAは5万円。もし20件の問い合わせがあればCPAは2万5千円です。同じ広告費でも、CPAが低ければ低いほど、費用対効果の高い運用ができている、ということになります。
不動産業界の平均CVRは2.47%。目標から逆算する予算策定術
では、自社の目標を達成するためには、具体的にいくらの予算が必要なのでしょうか。ここで役立つのが、業界の平均的な数値から逆算する方法です。
ある調査によると、不動産業界のリスティング広告における平均コンバージョン率(CVR:広告がクリックされた回数のうち、問い合わせに至った割合)は2.47%とされています。
【目標から逆算する予算策定の例】
- 目標: 月に10件の問い合わせを獲得したい
- 必要なクリック数: 10件 ÷ 2.47%(0.0247) ≒ 405クリック
- 不動産業界の平均クリック単価(CPC): 約100円〜300円と仮定
- 必要な広告予算: 405クリック × 200円 = 約81,000円
もちろん、これはあくまで机上の計算です。しかし、このように具体的な目標と業界の平均値を基に予算を考えることで、根拠のある広告投資計画を立てることが可能になります。
【実践編】成果を最大化するリスティング広告の運用ポイント
ここからは、私が14年間の実務で培ってきた、成果を最大化するための具体的な運用ポイントを解説します。
1. キーワード戦略:「地域名×物件種別」で成約に近い顧客を狙う
リスティング広告の成否は、キーワード選定で8割決まると言っても過言ではありません。不動産業界で最も効果的なのは、「地域名 × 物件種別」の組み合わせです。
- 「神戸市中央区 賃貸マンション」
- 「芦屋 中古戸建」
- 「西宮北口 新築 分譲」
さらに、「相場」「資料請求」「内覧予約」といった、ユーザーの具体的な行動を示すキーワードを組み合わせることで、より成約に近い、熱量の高い顧客にアプローチできます。
2. エリアターゲティング:商圏に合わせた配信で無駄な広告費を削減
リスティング広告の大きなメリットの一つが、広告を配信するエリアを細かく設定できることです。 例えば、「店舗から半径10km以内」や「〇〇市と△△市のみ」といった設定が可能です。
神戸市で営業されている会社が、東京のユーザーに広告を表示しても、問い合わせに繋がる可能性は極めて低いでしょう。自社の商圏を正確に把握し、ターゲットとなる顧客がいるエリアに限定して広告を配信することで、無駄な広告費を劇的に削減できます。
3. 除外キーワード設定:「知っているか否か」で費用対効果が劇的に変わる
成果の出るキーワードを選ぶのと同じくらい重要なのが、成果に繋がらない無駄なキーワードを「除外」する設定です。 これを知っているか否かで、費用対効果は全く変わってきます。
【不動産業界で共通して除外すべきキーワード例】
- 購入意欲が低い: 「とは」「意味」「DIY」「リフォーム」
- 情報収集段階: 「ブログ」「まとめ」「比較」
- 費用関連(安さ目的): 「無料」「激安」「0円」
- 関連性のないもの: 「求人」「売却」「投資」「事故物件」
これらのキーワードで広告が表示されても、クリックされるだけで問い合わせには繋がりません。定期的に検索語句レポートを確認し、無関係なキーワードを地道に除外していく作業が、広告費の無駄遣いを防ぎます。
4. 広告文とLPの最適化:「駅徒歩5分」「ペット可」など具体的な魅力を伝える
ユーザーがキーワードを検索した際、最初に目にするのが「広告文」です。ここでいかに興味を惹きつけられるかがクリック率を左右します。
悪い例: 〇〇市の不動産ならABC不動産へ!豊富な物件情報。
良い例: 【〇〇駅徒歩5分】ペット可の築浅マンション。初期費用0円プランあり!
このように、具体的な数字や、ユーザーが魅力を感じるであろうキーワード(ペット可、駐車場あり、南向きなど)を盛り込むことが重要です。
そして、広告をクリックした先のLP(ランディングページ)の内容と広告文が一致していることも絶対条件です。 「ペット可」と広告文にあるのに、LPにペット可物件の情報がなければ、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。
【事例紹介】リスティング広告で反響を2倍にした不動産会社の軌跡
ここでは、弊社が実際に支援させていただいた中小の不動産会社様の成功事例を、個人情報に配慮した形でお伝えします。
事例1:CPA半減・反響数2倍!毎週のPDCAで改善を続けた賃貸仲介会社
神戸市内で賃貸仲介業を営むA社様は、当初ご自身でリスティング広告を運用されていましたが、CPAが3万円を超え、費用対効果が合わない状況でした。
弊社で運用をお引き受けし、まず行ったのはキーワードの全面的な見直しと、徹底した除外キーワード設定です。さらに、問い合わせフォームの入力項目を減らすといったLP改善も並行して実施。毎週の定例会で数値を分析し、細かな改善(PDCAサイクル)を地道に繰り返しました。
その結果、3ヶ月後にはCPAを1万5千円まで半減させ、反響数は2倍に増加。成功の鍵は、特別な裏技ではなく、データを元に仮説検証を繰り返すという「地道な改善活動」にありました。
事例2:CVR1.8倍!エリア×物件特化で成功した新築分譲会社
阪神間で新築分譲マンションを手掛けるB社様は、幅広い層に広告を配信した結果、クリックはされるものの問い合わせに繋がらないという課題を抱えていました。
そこで弊社は、ターゲットを「30代〜40代のファミリー層」に絞り込み、「〇〇駅 新築マンション 3LDK」といった、より具体的で専門性の高いキーワードに広告費を集中投下する戦略をご提案。さらに、LPにはルームツアー動画を埋め込み、ユーザーの物件理解度を高める工夫を施しました。
この戦略が功を奏し、広告のコンバージョン率は1.8倍に向上。無駄なクリックが減り、購入意欲の高い見込み客からの問い合わせが増加しました。
【2025年最新トレンド】AI活用でリスティング広告はこう変わる
リスティング広告の世界は、日進月歩で進化しています。特に2025年以降は、AIの活用が成功の鍵を握ると断言します。
GoogleのAIが全自動運用。「P-MAXキャンペーン」の衝撃
今、最も注目すべきトレンドが「P-MAX(パフォーマンス最大化)キャンペーン」です。 これは、登録した広告文や画像、動画などを基に、GoogleのAIが最適なユーザーを自動で探し出し、検索、YouTube、Gmailなど、Googleのあらゆる掲載面に広告を配信してくれるという画期的な仕組みです。
これまでの手動での細かい設定が不要になり、AIに任せることで、人間では見つけられなかった潜在的な顧客層にアプローチできる可能性があります。 中小企業こそ、このAIの力を活用し、運用工数を削減しながら成果を最大化すべき時代が来ています。
Cookie規制後の世界。自社データの活用が生き残りの鍵
インターネット広告業界では、プライバシー保護の観点からサードパーティCookie(ウェブサイトを横断してユーザーを追跡する技術)の利用が段階的に廃止されるという大きな変革が起きています。
これにより、これまで主流だった「サイトを訪れたユーザーを追いかけて広告を出す(リターゲティング)」といった手法の効果が薄れていくことが予想されます。
これからの時代に重要になるのは、自社で収集した顧客データ(ファーストパーティデータ)です。 例えば、過去に問い合わせをくれた顧客リストや、メルマガ登録者のリストなどを活用し、広告配信に利用することが、生き残りの鍵となります。CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)といったツールを導入し、今のうちから自社データの蓄積と活用を進めていく必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q: リスティング広告の運用は自社(インハウス)と代理店のどちらが良いですか?
A: 結論から言うと、最初は不動産業界に知見のある代理店に任せ、ノウハウを学びながら将来的なインハウス化を目指すのが最も現実的です。リスティング広告は専門性が高く、常に最新情報へのアップデートが求められるため、未経験の方がいきなり成果を出すのは容易ではありません。弊社でも、最終的にクライアント様が自走できる「インハウス化」をゴールに支援しています。
Q: 広告を始めてから成果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
A: 一概には言えませんが、適切な設定と運用を行えば、1〜3ヶ月で初期の成果が見え始めることが多いです。重要なのは、短期的な成果に一喜一憂せず、蓄積されたデータを分析しながら継続的に改善していくことです。
Q: 広告費が少ない(月10万円以下など)のですが、それでも効果はありますか?
A: 可能です。ただし、その場合は配信エリアやキーワードを徹底的に絞り込む必要があります。「神戸市中央区 賃貸 単身」のように、ニッチでも成約確度の高いキーワードに集中投下することで、少ない予算でも成果を出すことは十分に可能です。
Q: 広告の成果は、どのように確認すれば良いですか?
A: 最低限、「コンバージョン数(問い合わせ件数)」と「CPA(1件あたりの獲得単価)」の2つは必ず確認してください。代理店に依頼する場合は、これらの数値が記載された月次レポートを必ず提出してもらい、運用の透明性を確保することが重要です。
Q: 広告運用で一番やってはいけない失敗は何ですか?
A: 「設定して、あとは放置」です。リスティング広告は、生き物のように市場や競合の状況が常に変化します。最低でも週に1回は管理画面を確認し、数値を分析して改善を続ける姿勢がなければ、成功は難しいでしょう。
まとめ
本日は、不動産業界におけるリスティング広告の運用ポイントと成功事例を、私の14年間の経験に基づいて解説しました。
重要なのは、キーワード選定やエリア設定といったテクニックだけでなく、データを元に仮説を立て、改善を繰り返すという「真摯な姿勢」です。そして、2025年以降はAIの活用が必須となります。
今日の情報が、皆様の会社のWeb集客を成功に導く一助となれば幸いです。もし、自社での運用に限界を感じたり、専門家の視点からのアドバイスが必要だと感じたら、いつでもお気軽にご相談ください。






