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OTA依存から公式予約へ|高山の宿を「泊まる場所」から「旅の目的」に変えた考え方

OTA依存から公式予約へ|高山の宿を「泊まる場所」から「旅の目的」に変えた考え方

    「Booking.comやAirbnbなどのOTAからは予約が入る。でも、公式サイトからは予約が入らない」

    今週は、高山市の7棟の一棟貸し宿を掲載する「飛騨棲家」から、このような相談を受けた事例をご紹介します。

    OTAとは、Online Travel Agentの略で、宿泊施設や航空券などをインターネット上で比較・予約できる旅行予約サイトのことです。宿泊施設にとって大きな集客力を持つ一方、同じエリアの施設が一覧に並ぶため、料金、立地、空室、口コミなどで比較されやすくなります。

    今回、私たちが目指したのはOTAをやめることではありません。

    OTAで「高山の宿を探す人」を獲得しながら、公式サイトでは「飛騨棲家に泊まりたい人」を育てる。

    そのために、ホームページ制作の前に、宿が選ばれる理由そのものから考え直しました。

    今週の相談|OTA以外に公式サイトでも予約を取りたい

    相談時点では、集客の大半をOTAに依存していました。

    OTA上でできる対策は重要です。しかし、料金調整、キャンペーン、写真、口コミ、掲載順位など、どうしてもプラットフォームの中での改善が中心になります。

    売上と粗利も確認したところ、予約が入っていても利益幅には課題がありました。具体的な売上・粗利は非公開ですが、料金を下げて選ばれる状態を続けるだけでは、客単価と利益を伸ばしにくいことが分かりました。

    ここで考えたのは、「OTAから予約を取り戻す方法」ではありません。

    そもそも、この宿が価格以外の何によって選ばれるべきか、という問いでした。

    問題はOTAそのものではなく、価格以外の選択理由が伝わらないこと

    OTAは、多くの旅行者に宿を見つけてもらううえで有効です。複数の施設を比較し、その場で予約できる利便性もあります。

    問題は、OTAを使うことではありません。OTAの比較項目の中だけで、施設の価値を伝え切ろうとすることです。

    写真がきれい、駅から近い、料金が手頃、口コミが多い。これらは大切ですが、競合も同じ項目を改善します。その結果、違いが見えにくくなれば、最後は価格で判断されやすくなります。

    公式サイトには、比較表に収まりきらない価値を伝える役割があります。

    誰が、どのような思いで宿を運営しているのか。そこでどのような時間を過ごせるのか。なぜ、その地域でこの宿を選ぶ意味があるのか。

    公式サイトは、OTAより安く売るためだけの場所ではなく、その宿を選ぶ理由を深く伝える接客の場所です。

    両者の役割は、次のように分けて考えます。

    接点 主な役割 旅行者へ伝えること
    OTA 発見、比較、空室確認、予約 料金、立地、設備、口コミ、空室
    公式サイト 理解、信頼、指名、直接予約 宿の考え方、過ごし方、地域との関係、選ぶ理由

    OTAと公式サイトに同じ役割を持たせるのではなく、OTAで見つけた旅行者が公式サイトを訪れたときに、比較表では分からなかった価値を理解できる状態をつくります。

    宿を探す人ではなく、旅の意味を探す人まで遡って考える

    一般的な宿泊サイトの集客では、「高山 ホテル」「高山 一棟貸し」のように、すでに高山で宿を探している人を想定しがちです。

    今回は、その一つ前、さらにその前まで遡りました。

    まだ高山に行くと決めていない。けれど、日本を旅行したい。観光名所を巡るだけでなく、地域の暮らしや日常に触れたい。そのような旅行者に、飛騨棲家から高山を提案できないかと考えました。

    これは相談時に立てた仮説です。ただし、日本政府観光局は世界22市場を対象とした国外旅行者調査で、国外旅行の目的、地方部で体験できると思うこと、旅行情報源などを調査しています。また、高山市も観光統計外国人観光客の調査・統計を継続的に公開しています。

    地域へ足を運ぶ海外旅行者がいるという市場の事実と、飛騨棲家の宿が持つ体験価値を結び付け、「高山の日常を感じられる宿」という戦略を組み立てました。

    OTAの価格比較から宿を旅の目的として選ぶまでの意思決定の変化

    「高山の日常に帰る」を7棟共通のブランドにする

    飛騨棲家には、個性の異なる7棟の一棟貸し宿があります。

    一棟ずつを点として紹介するだけでは、それぞれの設備や立地の違いで比較されます。一方、7棟を「高山の日常に帰るための棲家」という共通の考え方で束ねれば、地域の中で面としてブランドをつくれます。

    そこで、公式サイトでは「旅先にも、帰れる場所を。」「飛騨高山の日常にそっと溶け込む」「泊まる場所から、旅の目的へ」という世界観を言葉と写真で表現しました。

    宿は、眠るための箱ではありません。

    朝の町を歩く。宿に戻って同じ卓を囲む。誰にも気兼ねなく、自分たちのペースで過ごす。そうした一日の流れまで含めて、選ばれる価値に変えていきます。

    公式サイトをハブにした3つの具体策

    公式サイトでブランドと予約導線をつなぐ

    最初に公式サイトをリニューアルし、ブランドの考え方、7棟それぞれの特徴、宿泊予約までの流れを一つにつなぎました。日本語だけでなく英語でも情報を届けています。

    見た目を整えることだけが目的ではありません。旅行者が世界観に触れ、自分に合う宿を見つけ、予約へ進める接客の順番を設計しました。

    コラムで旅先決定前の検索とAI検索に接点をつくる

    次に進めるのが、公式サイトをハブにしたコラムです。

    「高山で宿を探す人」だけでなく、日本の日常、地方での暮らすような旅、家族や仲間との一棟貸し滞在などを調べる人に役立つ情報を発信します。

    検索エンジンやAI検索に見つけてもらうこと自体を目的にせず、旅行者が知りたいことへ、飛騨棲家だから出せる具体的な体験情報で答えます。これは、一般論を並べず、経験と根拠から設計するSEO記事の考え方や、AI検索に強いホームページづくりとも共通します。

    SNSで宿から始まる高山の日常を見せる

    InstagramやTikTokは、施設の設備を並べるだけではなく、宿から始まる一日を見せる役割を持たせます。

    朝にどこを歩くのか。どの店へ立ち寄るのか。宿へ戻ってどのように過ごすのか。断片的な観光情報ではなく、「この宿に泊まったときの物語」として企画します。

    サイト、コラム、SNSを別々の施策にせず、同じブランドのストーリーへつなぐことが重要です。

    約1か月の初期結果|海外流入・滞在は約1.8倍、公式予約は0件から1件へ

    リニューアル後の計測期間は、まだ約1か月です。

    その初期段階で、サイトの滞在時間と海外からの流入は、リニューアル前の約180%、およそ1.8倍になりました。フランス、スペイン、カナダ、台湾からの訪問増も確認しています。

    さらに、それまで0件だった公式サイト経由の予約が1件発生しました。

    1件という数字だけを見れば、全体の予約数や売上を変える規模ではありません。OTA比率にも、現時点では大きな変化は起きていません。

    それでも、0件と1件の間には明確な違いがあります。

    公式サイトから予約が生まれたことで、「公式サイトでも価値を伝え、予約につなげられる」という仮説を初めて実際の行動で確認できました。

    サイトリニューアル約1か月後の海外流入と公式予約の初期結果

    まだ成功とは言わない。次に検証する数字

    約1か月の結果だけで、リニューアルが成功した、OTA依存を解消したとは言えません。

    次は、3か月、6か月と期間をそろえながら、次の数字を確認します。

    • 国・言語別の流入数と滞在状況
    • コラムや検索から宿泊ページへ進んだ割合
    • 公式サイトの予約数と予約率
    • OTAと公式サイトの予約比率
    • 予約単価と粗利の変化
    • SNSから公式サイトへ移動した人数
    • どのコンテンツを見た人が予約したか

    アクセスが増えただけで終わらず、誰のどの判断が変わったのかを確認します。Google Analyticsのページとスクリーンのレポートなどを使い、流入後に読まれたページやユーザー行動も確認します。そこで得たデータと学びは、次のサイト改善、コラム、SNS企画へ戻します。

    宿泊施設が公式予約を増やすための5つの確認項目

    同じ悩みを持つ宿泊施設は、まず次の5点を確認してください。

    1. OTA経由と公式サイト経由の予約数・予約率を分けて把握しているか
    2. 料金・立地・設備以外に、その宿を選ぶ理由を一文で言えるか
    3. 宿を探す前の旅行者が求める体験や感情まで調べているか
    4. 公式サイトでブランド、宿の比較、予約が一つの流れになっているか
    5. SEO、AI検索、SNSに、それぞれ異なる役割を持たせているか

    施策から考えると、「Instagramを始める」「コラムを書く」「英語ページを作る」という作業の一覧になりがちです。

    先に、誰のどの判断を変えるのかを決めます。そのうえで、公式サイトは接客、コラムは発見と理解、SNSは疑似体験というように役割を分けます。

    よくある質問

    Q. OTAをやめれば公式予約は増えますか?

    A. OTAをやめることが先ではありません。OTAの集客・比較・予約機能を活用しながら、公式サイトで価格以外の選択理由と直接予約の導線を整えることが重要です。

    Q. 公式サイトをリニューアルすれば予約は増えますか?

    A. デザイン変更だけでは十分ではありません。誰のどの判断を変えるかを決め、ブランド、コンテンツ、予約導線、計測を一体で設計する必要があります。

    Q. 公式予約が1件だけでも成果といえますか?

    A. 売上全体への効果を判断するには早いですが、0件だった導線から1件が生まれたことは、公式サイトでも予約につながる可能性を確認した初期シグナルです。

    まとめ|OTAと競うのではなく、公式サイトにしか伝えられない価値を育てる

    OTAには、旅行者に宿を見つけてもらい、比較・予約してもらう大切な役割があります。

    公式サイトの役割は、それをそのまま置き換えることではありません。OTAの比較表だけでは伝え切れない、宿の考え方、過ごし方、地域との関係を伝え、「この宿に泊まりたい」という指名を育てることです。

    今回の飛騨棲家の取り組みは始まったばかりです。約1か月で海外流入と滞在に変化が生まれ、0件だった公式予約が1件になりました。次は、コラムとSNSを加え、どの接点が予約と客単価につながるかを検証します。

    SELF ACHIEVEでは、ホームページ、SEO、AI検索、SNSを先に売り込むのではなく、事業の数字と顧客の意思決定を確認してから、それぞれの役割を設計します。Webマーケティング戦略でも、施策を始める前の現状把握と設計を重視しています。

    宿泊施設の公式予約や、価格競争から抜けるブランドづくりにお悩みの場合は、現在の流入・予約・粗利を整理するところからご相談ください

    施策の前に、戦略を。成果を、自社の資産へ。SELF ACHIEVE。

    このコラムの監修者
    新原 秀崇

    代表取締役

    新原 秀崇

    大学卒業後、外資系企業やラジオ局で営業・マーケティングを経験。2011年に株式会社セルフアチーブを創業し、神戸を拠点に中小企業のWEB集客支援を開始。累計200社以上の顧客獲得を支援し、コンテンツマーケティング・SEO・WEB広告を専門領域として代表自ら戦略設計に携わる。

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