
広告やホームページで自社の強みを伝えているのに、思うような相談につながらない。そのとき、見直したいのは表現だけではありません。自社が伝えたいことと、お客様が知りたいことがずれている可能性があります。
このずれを確かめるのが、マーケティングリサーチです。AIを活用すれば、調査するキーワードの候補を広げたり、集めた情報から仮説を整理したりする作業を進めやすくなります。
大切なのは、AIが考えた答えで施策を決めるのではなく、実際に調べた情報をもとに仮説をつくることです。
この記事では、セルフアチーブで実践しているリサーチの考え方と、私が支援の現場で使っている手順を紹介します。検索データや顧客の声をAIと一緒に整理し、施策の設計につなげるまでの流れです。
施策を決める前に、お客様が何に迷っているかを調べる
セルフアチーブでは、事実を把握し、仮説を立て、設計し、行動した結果から改善や学びを得る、という流れで施策を考えています。計画から始めるのではなく、リサーチを先に置くRPDCA(リサーチ→計画→実行→評価→改善)の考え方です。

たとえば「専門性の高さを伝えれば選ばれる」と考えていても、相談者が最初に気にしているのは「安心して話せる相手か」かもしれません。サービスの強みが間違っているのではなく、相談する前の不安に答えられていないのです。
調べたいのは、大きく分けて次の二つです。
- 何を知りたいのか: 検索キーワードや検索数から、関心のあるテーマを探る。
- なぜ選ぶ・見送るのか: SNSや口コミなどから、判断のきっかけや不安を探る。
検索数の多さだけでなく、その言葉を調べる背景まで考えることで、誰に何を伝えるべきかが見えてきます。
AIを活用したマーケティングリサーチの5つの手順
ここからは、実際の進め方を5つの手順で説明します。1と2で調査の軸を決め、3と4で事実を集め、5で伝える内容と導線を設計します。
1. 自社の商品・サービスと市場を文章にする
最初に、自社が何を提供し、どのようなお客様の困りごとを解決しているのかを整理します。すでにサービス紹介文があれば、それを出発点にできます。
商品名や機能だけでなく、対象となるお客様、利用する場面、比較される商品やサービスも書き出しましょう。AIに市場を考えてもらう際の前提になります。
整理が難しければ、その段階からAIと壁打ちして構いません。ただし、AIが補った自社の特徴や実績は、実際と一致するか確認してください。
2. AIと検索キーワードの軸を考える
自社の説明をもとに、どのような悩みを持つ人が、どのような言葉で検索しそうかをAIと考えます。
たとえば、次のように依頼できます。これは読者向けの依頼文の例です。
以下は自社の商品・サービスと対象市場の説明です。これを必要とする人が、困ったときや比較するときに検索しそうなキーワードの候補を挙げてください。「抱えている悩み」「利用する場面」「比較したいこと」に分け、候補を考えた理由も示してください。実際に検索されているかはこの時点では分からないため、すべて調査の候補として示してください。
ここでは、調査の入り口になる言葉を洗い出します。自社で使っている専門用語だけでなく、お客様が使いそうな言い回しにも目を向けます。
お客様が実際にどの言葉で調べているかは、この時点では分かりません。同じ意味の別の言い方も一緒に出しておくと、次の調査で拾える範囲が広がります。
3. ラッコキーワードなどでサジェストや検索数を確認する
次に、候補の言葉を調査ツールで調べます。サジェストとは、検索窓への入力に応じて表示される候補語のことです。ラッコキーワードではサジェストや月間検索数を確認でき、月間検索数の取得は有料機能として案内されています。
サジェストから関連する言葉を見つけ、さらに複数の言葉を組み合わせた「複合キーワード」を調べます。取得した一覧をAIに渡し、「費用を知りたい」「比較したい」「不安を解消したい」など、検索意図ごとに整理していきます。
AIが挙げたキーワードは調査候補であり、実際の検索データとは分けて扱います。検索数についても、AIに数字を推測させるのではなく、調査ツールで取得した値と取得時点を残しましょう。
月別のデータがあれば、増減した時期に何が起きていたかも調べます。キーワードに「2026年8月」のように時期を足して検索し、その時期に何があったかを調べます。時期が重なる出来事を見つけても、それが原因と即断せず、背景を考える材料にします。
4. SNSや口コミで、選ぶ理由と見送る理由を探る
検索キーワードだけでは、実際に購入を決めた理由や、途中でやめた事情までは分かりません。そこで、SNSや口コミなどの声も確認します。私たちは、口コミサイトを見てから、最後にSNSを見る順序で調べています。
行動を後押しする要因を「トリガー」、妨げる要因を「バリア」と呼びます。どちらにも、価格や機能といった実利的な理由と、安心できる・感じがよいといった気持ちの理由があります。
「評判がよい・悪い」で終わらせず、何がその評価につながったのかを読み取ることが大切です。
AIには、確認できた投稿やレビューを渡し、購入の決め手、不安、見送った理由を整理してもらいます。元のURLや投稿時期も残し、投稿者が書いていることと、AIが補った解釈を分けておきます。AIがすべてのSNSを直接閲覧できるとは限らないため、人が確認した内容を渡す前提で考えると進めやすくなります。個人情報や非公開の相談内容はそのまま入力せず、利用するAIのデータ取扱条件も確認してください。
一つの投稿は、その人の経験や意見です。市場全体の考えと決めつけず、異なる声も見ながら仮説を考えます。
5. 根拠を確認し、伝える内容と導線を設計する
調査した情報をもとに、誰に何を伝えれば行動しやすくなるかをAIと壁打ちします。
ここで私が必ず確認するのは、仮説が事実に基づいているかどうかです。もっともらしい説明でも、根拠から離れてしまえば、リサーチをした意味がありません。
整理するときは、「確認した情報」「そこから考えた仮説」「試す施策」を分けると、判断の流れが明確になります。たとえば相談前の不安が見つかったなら、その不安に答える説明をページのどこに置くかまで考えます。
実施後に何を確かめるかも決めておきましょう。問い合わせ数だけを見るのか、問い合わせから契約につながる割合も見るのかで、施策の評価は変わります。

離婚相談の支援で、専門性の打ち出しを見直した理由
私が関わった離婚相談分野の支援でも、リサーチによって伝え方を見直した経験があります。ここではAI導入の効果ではなく、調査から訴求を考える過程を紹介します。
当初は、「何に強い専門家なのか」を打ち出すことを考えていました。しかしサジェストを調べると、法律家への怖さや相談への不安、優しい弁護士を求める言葉が見つかりました。
私はそこから、配偶者との関係で傷ついている方の中には、「相談相手にも強い言葉で傷つけられたくない」という気持ちがあるのではないかと考えました。サジェストは、その気持ちを証明するものではなく、仮説を立てる手がかりです。
専門性を伝えるだけでなく、「優しく話を聞いてくれる」「気持ちに寄り添ってくれる」と感じられることも、比較するときの後押しになる。その考えから、安心して相談できることを伝える方向へ訴求を見直しました。
ただし、離婚分野なら一律に優しさを打ち出せばよいわけではありません。慰謝料の獲得を重視する方には、交渉力や頼もしさを伝える必要もあります。相談者の状況と求める解決によって、伝える内容は変わります。
訴求を見直した後、問い合わせ数が劇的に増えたわけではありません。一方、私が支援の中で見てきた変化は、先生や事務所の雰囲気に合う方からの問い合わせが増え、受任率が高まったことです。これは計測した数値ではなく、支援の現場で把握したことです。
施策を振り返る際は、問い合わせ数だけでなく、自社に合うお客様との接点や受任率にも目を向けたいと考えています。

AIで変わったのは、調査から設計へ進む速さ
AIを使って、これまで思いつかなかった仮説が次々に生まれたかというと、私自身はそこまでの変化を感じていません。
実感しているのは、調査の軸を考え、集めた情報から仮説を整理する時間を短縮できたことです。結果として、誰に何をどう伝えるかという設計へ進みやすくなりました。
AIを使っても、根拠を確認し、どの仮説を試すかを判断する仕事は残ります。作業を速くすることと、判断を任せきりにすることは別です。
よくある質問
Q. AIだけでマーケティングリサーチを完結できますか?
A. 完結はできません。調査の候補出しや情報整理には活用できますが、参照できる情報は利用環境によって異なります。検索データや投稿の原文を確認し、仮説の根拠を人が確かめる工程を組み合わせましょう。
Q. 検索数が多いキーワードから優先すればよいですか?
A. 検索数だけでは判断できません。自社が解決できる悩みなのか、どの段階のお客様が調べる言葉なのかも確認します。数が多くても、自社のサービスと合わなければ相談にはつながりにくくなります。
Q. SNSのネガティブな意見も調べる必要がありますか?
A. 必要です。購入を見送った理由や利用前の不安は、伝えるべき情報を考える手がかりになります。ただし、一部の意見をすべてのお客様の考えとして扱わないようにします。
Q. 自社の強みをうまく説明できない場合は、何から始めればよいですか?
A. 実際に相談された困りごとと、自社がどのように対応したかを書き出してください。それをもとに、誰のどんな問題を解決しているのかをAIや支援担当者と整理すると、調査の軸を考えやすくなります。
まとめ|まずは自社を説明し、お客様の検索する言葉を探す
AIを活用したリサーチは、自社の商品・サービスと市場を言語化するところから始まります。そこから検索キーワードの候補を考え、調査ツールやSNSなどで確かめ、施策につながる仮説をつくります。
最初の一歩は、今ある自社の紹介文を用意し、「どんな困りごとを持つ人が、どんな言葉で調べるか」を整理することです。その候補を、実際の検索データと照らし合わせてみてください。
セルフアチーブでは、何をAIに任せるかという整理から、業務に合わせた設計・導入を支援しています。リサーチや企画の進め方を見直したい方は、AI業務効率化・自動化支援 ↗(別タブで開きます)をご覧ください。
代表取締役
新原 秀崇
大学卒業後、外資系企業やラジオ局で営業・マーケティングを経験。2011年に株式会社セルフアチーブを創業し、神戸を拠点に中小企業のWEB集客支援を開始。累計200社以上の顧客獲得を支援し、コンテンツマーケティング・SEO・WEB広告を専門領域として代表自ら戦略設計に携わる。